身近なところでも、ちらほら聞くようになったToFセンサ。
ToFセンサモジュールとしてはVL53L0Xが有名ですよね。
LiDAR関係で活用されているToFセンサですが、調査してみると自動運転以外にもスマートフォンやドローンなど様々な分野で利用されており、それぞれの分野からの情報が混ざり合って、全体像が掴めません。そこらへんを素人ながらまとめてみています。
特にToFとLiDARの違いは理解しづらいです。
皆さんは ToFセンサとLiDARとの違い、説明できますか?
それでは解説していきましょう。
おまけとして、測距センサのRadar(レーダー),Lidar(ライダー),Sonar(ソナー)の違いについても簡単に調べてきました。興味のある方は最後までお付き合いください。
※素人が個人で調べてまとめた内容になっております。間違い等、お気づきの方は指摘していただけると幸いです。
ToFセンサとは?
ToFセンサとは、Time of Flight の略称で、物体までの距離をレーザー光で測定するセンサーになります。秋月でもToFセンサモジュールを取り扱いがあり、手軽に入手できるようになりました。
原理
名前の通り、”光の飛行時間”を測定します。レーザー光を発光したタイミングと、フォトダイオードにて受光したタイミングを計測し、距離を算出します。つまり、光の飛んだ時間を計測し、距離を割り出しています。
光の飛行時間を測る技術(TDCの活用)
また、実際に計算してみると分かるのですが、光の飛行時間を測定するのでかなりの細かさになります。
具体的に1cmの距離を測定する場合には 66psと計算でき、ピコセック単位の時間計測技術が必要になることが分かります。
そこでToFセンサではこの微小時間を計測するため、TDC(Time to Digital Converter)という回路が活用されています。
TDCにSTART信号(レーザー光発射タイミング)とSTOP信号(反射波受光タイミング)を入力すると、時間に応じたデジタル信号が出力されます。これにより微小時間を計測しているのです。
Texas Instruments では TDCのICを出しているので、TDCの詳細を知りたい方はそちらを参考にすると面白いかも知れません。
LiDAR とはどういう関係?
ToFと合わせて良くみるキーワードとしてLiDAR(Lidar)があります。LiDARとはLight Detection and Rangingの略称で、これもまた物体との距離を測定する技術です。レーザー光を対象物に照射し反射光を観測することで距離測定を行います。
ToFとLiDARの両者の違い
両者の違い それは、LiDARは”レーザー光の反響によって距離を測定する技術“全般を指す言葉”で、ToFセンサは”LiDARのToF方式のセンサ”とLiDARの分類を指す言葉なります。
Lidarの変調方式としてはパルス波を送信するToF方式と、FM波を送信するFMCW方式に分類されます。FMCW波では射出するレーザー光を工夫して、距離だけでなく速度検知も同時に行えます。
調査した中では、現状のLidarはToF方式がよく出回っているようです。
※LiDARと言えば自動車の自動運転技術ですが、自動運転技術に利用されるLiDARには、ToF方式のみならず、近年はFMCW方式の採用も検討されているようです。
一般製品上の ToFセンサとLiDARスキャナの違い
ただ定義としては上記のように分類されますが、一般的の製品の認識は少し違います。LiDARと呼ばれるものはあるエリア全体を見渡せる製品、対して、ToFセンサは、ある離れた一点との距離を測る製品で区別されています。
そのため、LiDARと表記されてあってもToFセンサを利用していない製品は、周囲スキャナとしての意味でLiDARと呼称しているケースになります。LiDAR製品の使用センサには気を付けましょう。
身近な応用例(ToFセンサやLiDAR技術)
LiDARには様々な応用例が見受けられます。多様な応用例を紹介しましょう。
スマートフォンやタブレットの例
ToF方式のLiDAR技術に利用されている身近な例では iPad Pro です。iPad Pro シリーズに搭載されたLiDARスキャナにはToFセンサが使われています。他にも最近のスマートフォンに採用されることが多くなってきています。
iPad Pro の例
下記の写真のように整列された赤外線レーザー光を照射して物体との位置関係を把握することができます。iPad Pro の照射密度は比較的粗いようですね。
ドローン の例
ドローンでの応用分野は広く、木々や地形をスキャンする用途や、地上までの距離を測定する 対地センサーに利用されている例もあるようです。
M5Stack製品のAtom Fly にもToFセンサ(VL53L0X)が採用されていました。
ToFセンサ(VL53L0X)の例
冒頭でもお話ししたVL53L0XはSTMicroが発売しているToFセンサです。シリーズ品として、VL53L1Xがあります。(性能がVL53L0Xよりも高性能。)
発光受光かつ、距離計測まで、パッケージ化してあり、I2C通信によって 計測値をデジタル値で取得することができます。
発光・受光素子は VCSEL(Vertical Cavity Surface-Emitting Laser) と SPAD(Singe Photo Avalanche Diode) です。VCSELはレーザー光を発光しますが波長は940nmと赤外線の波長です。
製品のスペックを確認すると、測定可能距離は、最大1mで、分解能は1mmです。
【おまけ】Radar(レーダー), Lidar(ライダー), Sonar(ソナー)の違いについて
Lidar調査のついでに調べたいものがありました。それがRadar(レーダー)、Lidar(ライダー)、Sonar(ソナー)についてです。
調べて初めて知りましたが、三者は名前が単に似ているのではなく、技術的に似通っているために名前が似ているようです。
三者とも、反響を用いる測距センサ技術になっています。 Radar(レーダー)はRadio Detection and Ranging の略で、Lidarがレーザー光を使用するのに対して、Radarは電波を利用します。Sonar (Sound Navigation And Ranging) は超音波を利用することで、対象物からの距離を測定しています。
以上の関係の対応表を作成してみました。
波長順に並べてみました。Sonarの超音波は水中で減衰することなく波を伝えられるので水中で積極的に利用されています。
RadarとLidarは共に電磁波を使用していますが、波長の長さによって、透過できる素材が変わってきたり、電磁波の飛ぶ距離、検出できる最小距離(解像度)が変わってきます。比較的に近距離で高分解能を選ぶ用途はLidar、低分解能でも遠距離を選ぶ用途はRadarを用いられているようです。
まとめ
今回はToFセンサとLiDARについて調査してまとめてみました。
LiDAR技術は、自動車の自動運転技術や最新スマホのみならず、ドローンやARに活用されていることが分かりました。
個人的にToFセンサとライダー、レーダーと、実に紛らわしい部分がクリアになり満足しています。
皆さんの技術知識になれば幸いです。
次の記事でお会いしましょう!
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